映画「牛の鈴音」 牛飼いの気持ち
ずっと気になっていた映画、「牛の鈴音」を見てきました。
40歳になるおばあさん牛を使って、老夫婦が昔ながらの農業を営む様子をたんたんと綴った、韓国のドキュメンタリー映画です。
見てよかった……かな。うん、見ておいてよかったと思います。今このときに。
(以下ネタバレ、映画を見たい人は見ないでね。だって映画見る人少ないと思うから、話したいんです)
実在の牛と夫婦の日常を撮っているのですが、この映画に出て来るおばあさん牛は、まーホントにヨボヨボで。
まっすぐに進むこともできず、人間が歩くより遅く、やっとこさやっとこさ畑を耕すんです。
隣りの畑ではトラクターが颯爽と駆け抜けていく。
それを見ておばあさん(人間)が「あ~あ、機械がある家はいいよねえ。あたしゃ本当にみじめだよ。こんな手のかかる老いぼれ牛しかなくて。ぶつぶつ……」
とひたすら愚痴をこぼします。
おじいさんは聞こえないふりをして、黙々と牛のために草を刈ります。
不自由な足を引きずって、自分もフラフラになりながら。
この映画、見てるほうも忍耐がいります。
老夫婦の子供たちは言います。
「この牛は本当に働き者だ。
俺たちが小さいころにやってきて、よく稼いでくれた。
あの牛のおかげで大学に行けたし、結婚もできた。
でも今はあんなに老いぼれて……。もう限界だろう。
お父さん、もう売ってしまったら?今後のお金のことは、俺たちが面倒みるから。」
おじいさん、家族中の勧めで牛を家畜市場に連れていきます。
もちろん、安い値段しかつきません。骨と皮ばかりのおばあさん牛だから、当然です。
哀れまれて善意の価格を提示されても「俺は500万ウォンじゃないと絶対に売らん!」の一点張り。
とうとう買い手がつかず、おじいさんは牛を連れて帰ってきてしまいました。
おばあさんはあきれ顔(でも、心なしかほっとしてたような)。
その後もおばあさん牛は、たくさんの薪を運んでくれました。
農作業も終わって初雪が降るなか、おばあさん牛は静かに息を引き取りました。
おばあさん牛は、40年近く通った畑のなかに、ローダーで運ばれ、ショベルで優しく土をかけられ、埋められました(近所の人がやってくれた)。
それをさびしそうに見つめるおじいさんの横顔で、映画は終わります。
こんなにも長く一頭の家畜と一緒に暮らすことは今ではないけれど(といってもこの映画の撮影はつい3年前の話)、牛は本当に家族だったんだなと、思いました。
今でも子とりの繁殖牛は10年以上飼いますよね。
その牛の娘、そのまた娘と、何代にもわたって付き合っていく。
その血の絆を一瞬で断ち切られた口蹄疫被害農家は、どれだけ辛かったことでしょう。
それでも、児湯の畜産農家の7割の方は、畜産再開を希望しているとか。
心から応援してます!
*牛の鈴音は、今週いっぱいなら東京の「下高井戸シネマ」で見られます。ナイトのみ。
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